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2. 試料
2.1 ヘス海膨の特徴と海洋底コアの概略
北太平洋のほぼ中央に位置するヘス海膨は、水深約2000から3500mの高まりであるため、酸素同位体比年代を得るのに不可欠な有孔虫殻が堆積物中で連続的に産出する。今回解析に用いたコアNGC59は、このヘス海膨の北東部、34°54.3’N、179°42.2’E、水深3571mから重力式コアラーによって得られた(Fig.1)。このコアは、長さが約4mで、炭酸塩を60〜90%含む遠洋性の石灰質軟泥であった。同コアの年代軸は、琉球大学理学部海洋学科の氏家研究室により測定された浮遊性有孔虫殻の酸素同位体比とSPECMAP標準酸素同位体比曲線(Imbrie et al., 1984(7))との対比により推定されている(伊藤, 1994(8))。その結果、同コアでは、堆積粒子が連続的に沈積していることが明らかになっており、本研究に適している。
2.2 中国のレス堆積物
今回、深海底堆積物から抽出した石英からの風送塵起源の石英の判別のため、中国の黄土高原中部の洛川のレス試料を用い、その中に含まれる石英との比較を行っている。同地域は、風送塵の起源である中国内陸乾燥地帯のすぐ風下に位置し、大規模な風成のレス堆積物が発達している。試料は、すでに堆積年代が明らかなレス堆積断面(陸・松本, 1996(9))から用いた。
3. 分析方法
3.1 サンプリング
コアからは、10cc定容器を用いてサンプリングを行った。この定容試料を乾燥させて乾燥密度(DBD; Dry Bluk Density)を求めた。堆積物の沈積流量(単位時間・単位面積あたりの堆積量: MAR; Mass Accumulation Rates)は、以下の式で計算できる(Rea and Janecek, 1981b)。
MAR(gcm-2kyr-1) = LSR x DRD x wt% x 0.01
ここで、LSR(Liner Sedimentation Rates)は堆積速度(cmkyr1)、wt%は沈積流量を求める成分の重量%である。例えば石英の沈積流量を求めるには、Wt%の項に石英の含有量を代入する。
3.2 石英の抽出及び分析
堆積物から石英を抽出する方法は、すでに確立されている(Sridhar et al., 1975(10); 溝田・井上, 1988(11))の方法にほぼ準じた。まず炭酸塩やオパール等の生物起源物質を溶解させて、次に粘土鉱物およびその他の岩質成分の除去を行った。試料約7gを秤量し、まず炭酸塩の溶解は、20%酢酸を200ml加え一晩放置した後、この溶液を2000rpmで10分間遠心分離して、その上澄みを捨て、再び蒸留水で満たし遠心分離した。これを3回繰り返して残渣堆積物の洗浄を行った。次にオパールの溶解は2Mの炭酸ナトリウム溶液400mlを加え、85℃で1時間に1回撹拌させながら5時間反応させた。そして前と同様に遠心分離し残渣を洗浄した。その後スミアスライドを作成し顕微鏡で生物起源物の炭酸塩とオパールが除去されていることを確認すると共に、残渣の岩砕物の構成鉱物の鑑定を行った。そして残渣を石英坩堝境内でピロ硫酸ナトリウムと融解させ、その融解物を3N塩酸にて分解した。これを前と同様に遠心分離し残渣を洗浄した。この処理は粘土鉱物を除去するためのものである。最後に石英以外の残った鉱物、例えば長石などをすべて溶解させる為に、40%ケイフッ化水素酸と反応させた。この際に溶液が石英に対して飽和であるようにあらかじめ溶液に市販石英を試料反応と同じ条件下で浸しておき、使用直前に濾過し石英を取り除いた。反応は、恒温漕を用いて18℃に保持し、日に2回攪拌させながら3日放置し、その後遠心分離し洗浄した。このようにして最終的に残っ

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Fig.1

Location map of Deep-Sea Core NGC59(34°55'N, 179°42'E, depth: 3571m) and Loes sediment in China(35°44'N, 109°25'E).

 

 

 

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